World Natural Heritage in Japan 日本の世界自然遺産

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屋久島

屋久島の生命の音から紡がれた、コムアイの音楽

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多様な生態系が織りなす自然は、音楽や写真、絵画など、さまざまなクリエーションの源になっています。世界自然遺産からインスピレーションを受けて作品を発表しているクリエイターにインタビュー。屋久島は、生命と水の音で満ちる場所。ミュージシャンで俳優のコムアイさんが、島に滞在し集めた音を使って楽曲を制作した思い出を語ります。
  • (写真提供:コムアイ)
  • (提供:ワーナーミュージック・ジャパン)

    コムアイ
    音楽ユニット・水曜日のカンパネラの元ボーカルで、現在はアーティストとして幅広く活動。2019年4月にオオルタイチをプロデューサーに迎えてEP『YAKUSHIMA TREASURE』をリリース。2024年にペルー共和国のアマゾンで第1子を出産。

    Instagram:KOM_I コムアイ (@kom_i_jp)

    雨と苔が森を育んだ“水の島”

    コムアイさんが魅せられたのは、屋久島の多様な苔。(写真提供:コムアイ)

    コムアイさんが初めて屋久島を訪れたのは、水曜日のカンパネラ名義で参加したYouTube Originalとの共同プロジェクト『Re:SET』の楽曲制作がきっかけ。「山や島のような、人間以外のものと向かい合ってみたらどうか」という鎌谷聡次郎監督の発案で、屋久島をテーマにすることを決めたそう。

    作曲を担当するオオルタイチさんらと屋久島を訪れ、森の自然音や町民の歌声など、フィールド・レコーディングを通して多種多様な音を採集。生物学や地質学に詳しい地元のネイチャーガイドに案内してもらいながら山歩きをしたことで、さまざまな発見や学びがあったといいます。

    「もともと豊かな大地の島という認識でしたが、意外にも植物にとっては厳しい環境であることを知りました。屋久島の土壌の大部分は硬い岩石で構成されていて、土層が浅いため植物がなかなか定着できないんです。山道を歩いていると、地面から木の根っこが浮いて、むき出しで隆起しているところがたくさんあって、『生きるぞ』と必死にしがみついている姿に強い生命力を感じました。また、屋久島は『月に35日雨が降る』といわれるほど雨の多い島ですが、そのおかげで岩の表面に生えた苔が分厚く成長し、土に代わってたっぷり水を蓄えることで、木々が育つ土壌がつくられます。豊富な雨が命の水となって、屋久島の自然を育んでいる。屋久島は“水の島”なんだと気付きました」

    屋久島の大部分は岩石で構成されており、地面で水を蓄えることが難しい。(写真提供:コムアイ)

    民謡とカエル、雨の音が紡いだ楽曲

    島には温泉が点在する。

    滞在中は山歩きをしたり温泉に入ったり、地元に古くから伝わる歌を聴いたりしながら過ごしていたと話します。

    「緒方麗(おがた うらら)さんという歌い手さんに聴かせてもらった屋久島の民謡『まつばんだ』と、島の伝統行事である綱引きの際に歌われる『綱引き歌』が印象的でした。中間(なかま)集落という村には十五夜に歌を歌いながら綱引きをする風習があるのですが、その時におばあちゃんたちが入れる「あ〜よいやいな」という合いの手を、このプロジェクトで制作した『屋久の日月節』に使わせてもらいました。カエルの顎下にコンタクトマイクを付けて聴いたカエルの鼓動や、木の枝に雨粒がポンっと弾くカリンバのような音など、ユニークな音にもたくさん出合えました」

    中間集落のガジュマルとオオルタイチさん。(写真提供:コムアイ)

    制作をする際は、自分の体験に引っ張られすぎないよう、その土地を訪れる前に抱いていた元のイメージも大切にしたいというコムアイさん。

    「『YAKUSHIMA TREASURE』は生命があふれて輪廻しているような、行く前に感じていた屋久島らしいイメージをベースに、水の音やおばあちゃんの歌、知り合った人の温もりなど、現地での経験を盛り込みながら旅の記録をする感覚でオオルタイチさんが制作してくれました。プロジェクト的には一曲で良かったのですが、想いやインスピレーションがあふれて、EPをリリースできるほどたくさんの楽曲が生まれました」

    収録曲の歌詞にもなった、大川の滝。(写真提供:コムアイ)

    屋久島は、体力に自信がなくても楽しい

    シーカヤックからの景色。(写真提供:コムアイ)

    コムアイさんはこのプロジェクトを経て、旅先での体験を盛り込みながらクリエイションするおもしろさに気付き、さまざまな場所に足を運んで制作を行う機会が増えたそうです。

    「色んな国のさまざまな場所に行くようになって、都会は人は黙っているのにずっと機械が喋っている特殊な街だと思うようになりました。普段生活していると麻痺してくるけど、海外に行って帰ってくるとより強く感じます。機械に頼りすぎてコミュニケーションが不自然になっているのかな。都会に住んでいてしんどい人は、特殊な街だからっていうのを知ってほしい。苦しくなったら全然逃げていいんだと思います」

    力強く地面に根を張る植物たちが、パフォーマンスのイメージソースとなった。

    リリースを記念してLIQUIDROOMで行われたワンマンライブには華道家の上野雄次さんが参加し、コムアイさんとオオルタイチさんが立つステージに何トンもの土を盛り、その上に苔を生けるというダイナミックなパフォーマンスを繰り広げました。

    「ステージの中心に土がどんどん盛られて山が形成されていく演出は、まさに屋久島そのものを表現しているかのようでした。そして埋もれそうになるほど激しく土が降り注ぐ厳しい環境下で、必死に演奏しよう、歌おうとする自分たちの姿が屋久島で感じた生命力と重なって、島の地面にしがみついて生きている植物が浮かびました。屋久島ならではの景色をステージ上で表現できたのではないかと思います」

    コムアイさんも訪れた、ヤクスギランド。

    最後に、屋久島への旅をもっと楽しむためのアドバイスをいただきました。

    「無理に縄文杉を見に行かなくても魅力がたくさんあることを知ってほしい。縄文杉に辿り着くにはハードなトレッキングコースを越える必要があるし、どうしても混んでしまいます。私は縄文杉を見ずに数度の滞在を終えましたが、十分過ぎるほど楽しい時間を過ごしました。屋久島には600種類以上の苔が生息していて、苔をルーペで観察しながら散策するだけでワクワクできるし、白谷雲水峡や大川の滝をはじめ、美しい自然を満喫できるスポットがたくさんあります。特にヤクスギランドは体力に自信がない人も安心して楽しめますよ。それなのにかなり古い屋久杉や、いろんな種類の苔が見られます。もう一つは、頼れるガイドさんに案内してもらうこと。屋久島の自然や歴史について教えてもらうことで、見えないものが見えてくる感覚になりました。単に「自然が気持ち良かった」で終わらせず、多角的に屋久島を満喫するためにも、リサーチした上でガイドさんにお願いするのがおすすめです!」

    『SAUNTER Magazine』撮影中のコムアイさん。(写真提供:コムアイ)

    コムアイさんが選ぶ、屋久島をより深く知るための3タイトル

    『南洋のソングライン』(大石始・著)
    各集落でのインタビューを手がかりに、琉球文化圏ではない屋久島に琉球音階の古い民謡が残っている謎に迫るノンフィクション。「琉球と薩摩、2つの文化圏の影響を受けたことを理解すると屋久島のことがもっと面白くなります」

    『SAUNTER Magazine』(Kilty BOOKS・刊)
    屋久島発の、旅のドキュメントマガジン。「『YAKUSHIMA TREASURE』をきっかけに取材を受けて、数年前の表紙にしていただいた号では屋久島の美しい自然と存分に戯れながら撮影していただきました」

    『屋久島の民話』紅の巻&緑の巻(下野敏見・著)
    島に昔から伝わる民話を収録した作品。「山にまつわる怖いストーリーが多く、壮大な自然に対する畏怖の念が伝わってきます。子どもと女性は山に入るなという訓話があるのも、厳しい環境だからこそなんだろうなと」

    ※この記事は2025年8月制作のものです。

    関連スポット

    屋久島公認ガイド

    住所
    -
    電話番号
    -
    URL
    http://www.yakushima-eco.com/

    「頼れるガイドさんについてもらうのがおすすめ。私は生物学や地質学の知識が豊富なガイドさんたちと一緒に山歩きをしていただきました」

    尾之間温泉

    住所
    鹿児島県熊毛郡屋久島町尾之間1291
    電話番号
    0997-47-2872
    URL
    https://www.town.yakushima.kagoshima.jp/cust-facility/1418/

    「何度も利用するうちに高めの湯温が癖になる温泉。マナーもたくさんあるから観光客の方は地元の人をお手本にして入ってくださいね」

    ヤクスギランド

    住所
    鹿児島県熊毛郡屋久島町 安房太忠嶽国有林内
    電話番号
    0997-46-4015
    URL
    https://y-rekumori.com/

    「屋久杉や苔むした森など、屋久島らしい景色を体感できる歩きやすいハイキングコースがあります。苔をのんびり観察するのにぴったり」

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