World Natural Heritage in Japan 日本の世界自然遺産

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Amami・Okinawa 奄美・沖縄

進化の神秘をいまに伝える亜熱帯の群島

日本列島の南端に位置する琉球諸島。黒潮の影響を受ける亜熱帯気候を有する島々は、多湿かつ温暖な環境を呈し、イリオモテヤマネコやルリカケスといった、ここでしか見ることのできない多くの固有種が生息します。その起源は地球が温暖だった1200万年前。海面が低くユーラシア大陸と地つづきだったことから、さまざまな陸生生物が渡ってきました。その後、氷河期をへて島々が形成されたあとも島々は離れたりくっついたりを繰り返し、その過程のなかで生態系は独自の進化を遂げるようになります。生き物の進化を知るという意味でも重要な場所とされ、2021年に「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島(奄美・沖縄)」は世界自然遺産に登録されたのです。

Through a Day 1日をめぐる

九州から台湾の間に連なる琉球諸島。南端の西表島から北端の奄美大島までの距離は約700kmもあり、それぞれが個性的な景観を生み出し、独自の生態系が営まれています。稀少な種が多く息づく4つの島で力強く美しい自然の姿に出合いました。

金見崎展望台(徳之島)
07:00

Kanamizaki Observation Deck 金見崎展望台(徳之島)

徳之島の北端に位置する金見崎展望台。岬に突き出すようにつくられた展望台からは、背景に徳之島の山々、そして目の前には太平洋と東シナ海の絶景が広がります。遠浅の珊瑚礁からつづく水平線から登ってくる朝日を眺めながら、刻々と移り変わっていく空のグラデーションに目を奪われます。

奄美自然観察の森(奄美大島)
09:00

Amami Nature Observation Forest (Amami Oshima Island) 奄美自然観察の森(奄美大島)

「ギャー、ギャー!」とけたたましい鳥の鳴き声。目を凝らしていると、天然記念物に指定されているルリカケスの姿が。瑠璃色と赤褐色のコントラストが美しく、主食のドングリをついばんではどこかへ飛んでいきました。森はアカヒゲやオーストンオオアカゲラといった稀少な鳥の観察に最適。展望台からは龍郷湾を一望でき、奄美大島の自然の豊かさを実感できます。

クーラの洞窟(西表島)
10:00

Ku-Ra Cave クーラの洞窟(西表島)

西表島の一部は珊瑚を由来とする琉球石灰岩でできています。ジャングルを分け入っていくと、そこにはぽっかりと口をあけた鍾乳洞が。ひんやりとした空気としたたる水の音が響く空間。頭上には1年でわずか0.5mmしか成長しないといわれる鍾乳石が連なります。空を見上げながら、時の流れに思いを馳せるのでした。

慶佐次川のマングローブ(沖縄島北部)
11:00

Mangrove of Gesashi-River (Northern part of Okinawa Island) 慶佐次川のマングローブ(沖縄島北部)

カヤックに乗り込み、慶佐次川をパドルで漕いでいくと、白い鳥が音もなく飛び立ちました。マングローブとは、海水と淡水が混ざり合う汽水域で生育する植物の総称で、慶佐次川ではオヒルギとメヒルギ、ヤエヤマヒルギの3種類が見られます。気根と呼ばれる特徴的な根のまわりにはカニやエビ、小魚が棲み、独自の生態系を織りなしています。

カンムリワシ(西表島)
12:00

Crested Serpent Eagles カンムリワシ(西表島)

車を走らせていると、目に飛び込んできたのはカンムリワシ。猛禽類のなかでは小柄ながらも、翼を広げた大きさは110cmを超え、勇ましい飛び姿を見せてくれます。古くから沖縄の民謡でも歌われ、国指定特別天然記念物に指定されている西表島を象徴する野生動物の一種です。こちらの動きを窺うように睨みをきかせ、森へと飛び立っていきました。

与名間ビーチ(徳之島)
13:00

Yonama Beach 与名間ビーチ(徳之島)

サンダルを脱いで水と戯れたくなる砂浜。ビーチが穏やかなのは、イノーと呼ばれる珊瑚礁のおかげで強い波から守られているから。徳之島でも屈指の透明度を誇り、海浜公園としても整備されており、毎年6月に開催されるトライアスロン大会の会場としても知られています。

油井岳展望台(奄美大島)
14:00

Mt. Yuidake Observation Deck (Amami Oshima Island) 油井岳展望台(奄美大島)

小高い山頂の展望台から南を望むと、加計呂麻の島々が。まさに群島と呼ぶにふさわしい景色が広がります。油井岳周辺は自然豊かな奄美大島のなかでも天然の亜熱帯広葉樹が多く残る場所。スダジイなどの照葉樹の森が広がり、南国らしいヒカゲヘゴといった巨大なシダ植物も見られます。

ゲータの滝(西表島)
15:00

Ge-Ta Falls (Iriomotejima Island) ゲータの滝(西表島)

うねるように張り巡らされた木の根を超え、川を渡り、ジャングルの奥地を目指して歩いていくと、谷間から水の轟音が響いてきました。密林のなかにぽっかりと姿を見せたのはゲータの滝。大きな階段状になった滝を間近で眺めていると、西表島は水が豊かな島なのだと実感します。

金見崎ソテツ(徳之島)
18:00

Kanamizaki Cycads (Tokunoshima Island) 金見崎ソテツ(徳之島)

かつて、金見集落を北風から守るために植えられたというソテツの森。徳之島だけでなく、奄美大島や沖縄にも自生し、防風林や土地の境界線として植えられてきました。また、果実はナリ味噌という郷土料理として使われることも。いまとなってはその樹齢は300年以上。約250mにわたって幻想的なトンネルをつくりだしています。

奄美群島国立公園ビジターセンター 奄美自然観察の森(奄美大島)
19:00

Amamigunto National Park Visitor Center (Amami Oshima Island) 奄美群島国立公園ビジターセンター 奄美自然観察の森(奄美大島)

ビジターセンターで奄美大島の自然について学んだあとは、星空を狙って日暮れを待ちます。山から降りてくる雲の合間から覗く天の川。森の奥から聞こえてくる鳥の鳴き声に耳を傾けながら、流れ星を探します。ふと気づけばあたりは街の明かりが届かない漆黒の世界。ここが宇宙の片隅であることに気づくのです。

写真=福岡秀敏

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