屋久島

黒潮が育んだ豊かな漁の文化。屋久島の食を探る

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屋久島の人々が愛する魚・トビウオ

屋久島では、遺跡調査によって約7,000年前には人々の生活があったと推測されており、いまでも13,000人ほどの人々が沿岸部を中心に暮らしています。屋久島周辺の海には、赤道付近からやってくる温かな海流・黒潮が流れ込んでおり、この島の人々は、黒潮によってもたらされた豊かな漁場とともに生活をしてきました。

 

箕作秀吉(きさくひでよし)さんは、屋久島で暮らすトビウオ漁を専門する漁師の一人。海面から飛び跳ね、100m以上にわたって滑空するこの不思議な魚は、黒潮に乗って台湾から北海道まで回遊する途中、屋久島沖にやってきます。屋久島の漁港は日本でいちばんトビウオの水揚げ量が高いことでも知られています。

箕作:屋久島では、昔からトビウオ漁が盛んで、島を象徴する食べ物のひとつとして知られています。唐揚げや塩焼きで食べても美味しいのですが、ここでしか味わえないのが生のトビウオ。刺身、酢味噌和え、棒寿司などで、屋久島のトビウオの新鮮さが味わえます。

 

トビウオの特徴は、その淡白であっさりとした味わい。毎日食べても飽きることはありません。箕作さんは、漁業の傍らで居酒屋「安永丸」を営んでおり、ここでも獲れたてとれたてのトビウオを刺身で提供しています。 

 

箕作:屋久島で、季節ごとに10種類ほどのトビウオがやってきます。日本でトビウオ漁は一般的ではありませんが、屋久島では「ロープ曳き」という独自の漁法で、トビウオ専門で捕る漁師も多いんです。この漁は全長1,500mほどの網とロープを使い、2隻の船でトビウオを追い込んでいくもの。4〜5人の漁師がひとつのチームになり、呼吸を合わせてトビウオを狙います。

地産地消だからこそ、とびきり新鮮な魚が味わえる

トビウオと並んで、屋久島で生きる人々の食卓に欠かせないのが「きびなご」という体長10cm以下の小さな魚です。口のなかに入れるとほのかな甘みを感じられるこの魚を、屋久島の人々は天ぷら、唐揚げ、一夜干しなど、さまざまな調理法で味わってきました。

そしてトビウオと同様に、きびなごの刺身も屋久島ならでは。きびなごは鮮度が落ちやすいために、刺身として出回ることはほとんどありません。豊かな海が目の前に広がる屋久島だからこそ、新鮮なきびなごをいただくことができるのです。

 

屋久島で寿司店「寿し いその香り」を営む渡邊力さんは、屋久島でとれる魚の魅力を次のように語ります。

 

渡邊:日本全国の漁港を勉強のために巡ったことがあるのですが、屋久島の魚は特別です。屋久島周辺の海は栄養が豊かで水産物が豊富にとれるだけでなく、水揚げしてから食卓に登るまでの時間が格段に短い。

 

特にきびなごは小さな魚なので、鮮度がすぐに落ちてしまう。だから、他の地域で食べると少し苦味がかかっているんです。甘さを感じられるきびなごを新鮮な刺身で味わえるのは屋久島ならではでしょう。

賞味期限は水揚げから12時間以内。「首折れ鯖」とは?

そして知る人ぞ知る、屋久島ならではの「新鮮な魚」といえば、「首折れ鯖」です。

 

鯖は、日本料理でもよく使われる大衆魚。こちらも鮮度が失われやすいため、刺身で食べられることはあまりありません。そんな鯖を最高の状態で生食するために屋久島の漁師たちが生み出したのが「首折れ鯖」です。

渡邊:屋久島の漁師は、鯖を水揚げするときに首を折って血抜きをし、塩氷に漬けていきます。こうすることで、ただでさえ新鮮な鯖の鮮度がより落ちにくくなるのです。

 

首折れ鯖の鮮度の違いは一目瞭然です。身がピカピカと照り輝いている。お客さまも、まずはその見た目に驚かれます。私の店ではその鮮度を活かすため、ここ屋久島でしか食べることのできない「刺身」や「握り(寿司)」にして提供しています。

 

身の締まった刺身を一口食べると、コリッとした歯ごたえとふくよかでキレのいい脂の味わいが舌に広がります。ただし、その賞味期限には注意が必要。首折れ鯖の美味しさは半日ほどしか楽しむことができず、それを過ぎると普通の鯖のような味に変わってしまうのです。

先祖から受け継がれた屋久島を守り続ける人々

漁師の家系に育った渡邉さんは、釣りをしながら海を眺めていると、海と屋久島の森とのつながりを実感できると話します。たとえば大雨が降った後。

 

渡邊:屋久島は、島のほとんどが標高1,000m以上の山々と森で埋め尽くされており、そこに降った雨が水分として島内を循環し、海へと流れ出てきます。大雨が降った直後は、海が緑がかった泥に覆われ、森の栄養分が海に溶け込んでいくのが視覚的にもわかるんです。

 

そして、その濁りが取れると、魚の食いつきも格段によくなります。その昔、屋久島では、神々の宿る場所である奥山に育つ屋久杉を伐採することはタブーとされてきました。先祖たちが屋久島の森を守ってきてくれたからこそ、いまここで暮らす私たちが漁業を営み、暮らしていけるのです。

屋久島で暮らす人々は、先祖代々、森に対して畏敬の念を持って接してきました。それは、森を守ることが屋久島の人々やその暮らしを守ることに直結している、と知っていたからに他なりません。渡邉さんの言葉は、そんな屋久島の人々の知恵が、いまでも変わらず息づいていることを教えてくれました。

屋久島 安永丸
住所:
鹿児島県熊毛郡屋久島町安房2400-120
電話番号:
0997-46-3055
営業時間:
17:30〜22:30(22:00ラストオーダー)
定休日:
店舗にお電話でお問い合わせ下さい
URL:
http://aneimaru.com/
寿し いその香り
住所:
鹿児島県熊毛郡屋久島町安房788-150
電話番号:
0997-46-3218
営業時間:
11:30~14:00(13:30ラストオーダー)、17:30~22:00(21:00ラストオーダー)
定休日:
火曜、水曜(夜のみ営業)※変更の可能性があるため、ご来店前に電話でお問い合わせください。
URL:
https://www.facebook.com/yakushima.isonokaori/
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