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小笠原諸島

小笠原諸島の固有種が多く残る、母島・乳房山トレッキングツアー

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多くの固有種が残された絶海の孤島・母島へ

小笠原諸島の玄関口である父島から、さらにフェリーで50kmほど南下した太平洋に浮かぶ母島。この島はその立地からもわかるように、小笠原諸島の固有の動植物が特に残っている島として知られています。

乳房山 Photo by Ogasawara Village Tourism Bureau

そんな母島のほぼ中央に位置する小笠原諸島の最高峰・乳房山(463m)は、トレッキングを通じて、小笠原の大自然や固有の生態系を満喫できるアドベンチャースポット。

 

登山道の途中にある湿性高木林の森では、ハハジマノボタン(7月~8月)、ワダンノキ(10月~12月)などの植物のほか、特別天然記念物のハハジマメグロ(鳥)や、オガサワラオカモノアラガイ(カタツムリ)など、さまざまな固有種を見ることができます。

登山口では、外来種の侵入を防ぐため、衣服や靴底の洗浄消毒を

乳房山のトレッキングツアーは、往復6km、約4時間の道のり。遊歩道も整備されているので、登山初心者や個人でも楽しめる登山ルートとして人気です。

 

登山道は1つのみ。お店や宿が集まる元地集落から徒歩5分ほどの登山口、下山口のどちらからでも登れますが、推奨されているのは登山口から乳房山頂上を目指し、時計回りで下山口に降りてくるルート(2019年8月現在、下山口のルートは一部通行止めとなっています)。

登山道が整備されているとはいえ、曲がりくねった南国の草木がはみ出しており、急な階段や鉄ハシゴ、滑りやすいポイントもあります。足元は履き慣れたトレッキングシューズをおすすめします。

 

また道中にトイレや自動販売機はありませんので、登山用のウェア、ザック、雨具、飲料水、携帯トイレなど、一般的な登山の装備は用意しておきましょう。

 

登山口に到着したら、外来種の侵入を防いで島固有の自然環境を守るため、靴底や衣服の洗浄を行います。マットで靴底についた小さな種子や虫を落とし、酢酸スプレーで消毒。衣服の付着物もクリーナーを使って落とします。もちろん植物を採取したり、動物に食料を与えたりはせず、ゴミは必ず持ち帰りましょう。

洗浄を済ませたら準備完了。小笠原諸島に広く分布する植物、オガサワラビロウやテリハボクが多く茂る登山道から乳房山の頂上を目指します。登山道の脇や離れた場所を歩くと希少種を踏み荒らしてしまう恐れがあるので、登山道から離れないようにすることが大切です。

トレッキングルートは、固有種との出会いの宝庫

ルート前半は急登の階段が続きます。体力を奪われますが、聞こえるのは鳥のさえずりと風の音だけ。南国らしい植物が頭上を覆い、照りつける日差しをさえぎってくれるので、心地よい涼しさも感じられます。

道中には、小笠原諸島に自生しているランの一種、ムニンシュスランのほか、タコノキ、ツルダコなど、数多くの固有種の植物が。植物の説明が書かれた看板も設置されているので、固有種の知識がなくても学びながらトレッキングを楽しめます。

ランの一種、ムニンシュスラン

オガサワラオカモノアラガイをはじめ、固有種のカタツムリも数多く生息。その大半が標高350mより上の一帯に生息しています。

 

小さなカタツムリを見つけるのは簡単ではありませんが、抜け殻は比較的よく見ることができるでしょう。雨の日は登山道の階段に現われることもあるので、くれぐれも踏まないように気をつけましょう。

オガサワラオカモノアラガイ Photo by Ogasawara Village Tourism Bureau

戦跡と南国の大自然のコラボレーション

途中、誰もが驚いて立ち止まってしまうのが、登山道の横に見える直径約20m、深さ約4mもの巨大な穴。これは第二次世界大戦中に着弾した500kg級爆弾の爆発跡。ほかにも砲台跡や塹壕など、戦争の爪痕を南国の植物に覆われた姿で見ることが可能です。

Photo by Ogasawara Village Tourism Bureau

穴の周辺には、幹の模様が「丸」で囲った漢字の「八」に見えることから名前が付いた、小笠原諸島の固有種のシダ植物・マルハチが育っています。大きいものでは高さ10mを超えるものもあり、その堂々たる佇まいは、さながら森のなかの巨大オブジェのよう。

マルハチ

さらに登っていくと、辺り一帯を埋め尽くすガジュマルの群生が姿を現します。曲がり、うねるガジュマルの幹や木根がつくりだす「天然のトンネル」。そのなかを注意深く、すり抜けるようにして先へ進みます。

登山道の階段は苔がむしているところも多く、滑りやすくなっています。また、急斜面に取り付けられた足場を渡るポイントも。切り立った崖のすぐ脇を歩くのはなかなかのスリルです。焦らず、ゆっくり進んでいきましょう。

クジラの潮吹きや透明な海までも見通せる360°の絶景

自然や生物と触れ合いながら2時間ほど登り続けていると、急にパッと視界が開け、乳房山の山頂に到着します。山頂には小さな展望台しかありませんが、そこには「360°の絶景」というご褒美が。

Photo by Ogasawara Village Tourism Bureau

北側には、小笠原諸島特有の地形である石灰岩のカルスト台地のほか、天気が良ければくっきりと父島の姿が。東側には海に突き出た細長い半島・東崎が伸び、透き通った海のなかまでも見える絶景が広がります。

Photo by Ogasawara Village Tourism Bureau

南側は登山口のある元地集落と沖港が見渡せるほか、遠くには姪島、妹島、姉島などの姿も。冬から春にかけて海面をよく見れば、ザトウクジラの親子連れを見つけることができるかもしれません。

山頂を示す碑には登頂を署名するレリーフがあります。あらかじめ観光協会で購入した登頂証明キットに入っているクレヨンで紙に石刷りし、観光協会に持ち帰ると、登頂証明証を発行してくれます。

山頂を示す碑で登頂を署名する

小鳥の水やりスポットで、ハハジマメグロに出会えるかも?

パノラマ展望を堪能したら、下山開始。来た道を戻るのではなく、そのまま登山道を進んで下山口を目指します。

 

登山道には数か所、野鳥の水やり場が用意されています。雨水を貯めたペットボトルが置いてあるので、水盆に水を注いでみてください。地球上で母島にしか生息していない、ハハジマメグロやアカガシラカラスバトが水浴びをしに寄ってくるかもしれません。

ハハジマメグロ Photo by Ogasawara Village Tourism Bureau

小柄で、黄色に輝く羽をまとうハハジマメグロがどこからともなく姿を現したら、静かに、そっとカメラを構えましょう。ここでしか撮れない貴重な1枚が記録できるはず。

 

最後はゆるやかな下り坂を降りつつ、元地集落の下山口にたどり着いたら、乳房山トレッキングツアーは終了です。

 

母島の森を深く知る自然ガイドさんのツアーに参加すると、固有種に出会える確率もアップ。その不思議な生態など、興味深いお話も楽しめます。

 

小笠原諸島を巡る旅は、船便の関係で最低5泊6日の日程が必要になるため、時間にゆとりを持ってアクティビティーを楽しむ人が多いそう。ぜひ、小笠原諸島の固有種との触れ合いを楽しみながら、山頂の360°大パノラマの絶景を手に入れてみてください。

一般社団法人 小笠原母島観光協会
住所:
東京都小笠原村母島字元地
電話番号:
04998-3-2300
URL:
http://hahajima.com/
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