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知床半島の動植物と触れ合いながら、羅臼湖の神秘的な景色を堪能

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リピーターが続出。幻の湖「羅臼湖」を目指すツアー

知床半島の中央にある知西別岳の麓、標高740m地点に知床半島で最大の湖・羅臼湖があります。

 

羅臼湖の周囲長は約4km。熊が生息する森に囲まれているため、かつては地元の人々でもなかなかたどり着けない幻の湖と呼ばれていました。しかし現在は登山道が整備され、羅臼湖までにある4つの沼を巡りながらトレッキングをすることができます。

知床半島のガイド会社「知床ファクトリー」が実施する羅臼湖のトレッキングツアーでは、知床横断道路(国道334号線)の途中、標高660m地点にある登山道の入り口から羅臼湖を目指し、往復約6km、高低差約80mのルートを進み歩きます。

 

途中、大小4つの湖沼のほか、点在する湿性植物や高山植物があり、登山者を飽きさせません。

 

「知床ファクトリー」代表の桜井秀哉さんによると、

 

桜井:標高約700m前後の登山道でありながら、緯度が高いため気温が低く、日本列島の主島である本州の標高2,000m相当に準ずる環境になっています。そのため高山植物が多く自生する景観を堪能できるんです。

 

道中では、キタキツネやシマリスなどの小型哺乳類のほか、ヒグマやエゾシカといった大型哺乳類も見ることができます。また、羅臼町周辺は、国際的にも希少な鳥類であるオジロワシの繁殖地になっています。

高山植物やそこに生息する昆虫をシマリスやキタキツネ、エゾシカが食べ、その動物たちをヒグマやオジロワシが食べる。

 

知床半島が世界自然遺産に登録された理由のひとつに、この地で生きる動植物たちの食物連鎖による独自の生態系がありますが、羅臼湖トレッキングツアーでは、その一部を間近に感じることができます。

桜井:知床半島のアクティビティーでは、「知床五湖ツアー」の知名度が一番高いのですが、リピーターは「羅臼湖トレッキングツアー」を選ばれる方が多いです。参加者は老若男女問わず幅広く、年に複数回、季節ごとにいらっしゃる方もいます。

 

人がまだ踏み入れたことがない山域もある秘境、知床半島の魅力を手軽に体験したい方にはぜひご参加いただきたいですね。

草木をかき分け泥道を歩いた先にある絶景

羅臼湖トレッキングツアーでは、登山道入り口まで送迎車で向かいます。羅臼湖までの登山道はひとつだけ。道中にトイレはなく、夏は携帯トイレを使用するためのテントが1か所設置されているだけです。

登山道入り口から羅臼湖までの道中には4つの沼があり、登山道入り口に近い順から二の沼、三の沼、四の沼、五の沼と名付けられています。一の沼も存在しますが、現在は安全上の理由で一の沼までの道は閉鎖されています。

 

登山初心者でも楽しめるとはいえ、広大な湿原が広がる羅臼湖一帯は、雪解け水の影響で季節問わず足元がぬかるんでおり、とりわけ三の沼までは草木に囲まれた険しい泥道が続きます。

泥道があるため長靴は必須アイテム。周囲は高山植物に覆われており、ハイマツをくぐり抜けたり、両側から覆い被さるクマザサを手でかき分けたり、雪の重みで倒伏したダケカンバをまたいだり。腰から上はクマザサの露でびしょ濡れになりますが、「全身を使って、冒険する気持ちで進みましょう」と桜井さん。

 

桜井:ぬかるんだ登山道を歩く際、ぬかるみを避けて道の端に寄ってはいけません。登山道の端は傾斜があって特にすべりやすいだけでなく、道の外側は植物が自生しています。植生保護のためにもぬかるみの真ん中を進むようにしてください。

また、軽登山に準じた服装、雨具、飲み物、飴やチョコレートなどの行動食が必要です。天候にもよりますが、夏場でも10℃程度までしか気温が上がらない日も珍しくありません。風も強く吹くときもありますので、夏場でもフリースなどの防寒具はかならず準備するようにしましょう。

登山道入り口から1時間ほど歩くと、三の沼に到着します。三の沼の見どころは、沼の奥にそびえる羅臼岳が湖面に映る「逆さ羅臼岳」。風のない日の湖面には青空や周囲の景色も映り込み、まるで絵画のような美しさです。

 

「春は雪景色、夏は新緑、秋は紅葉とさまざまな羅臼岳の景色が楽しめますよ」と桜井さん。展望デッキに腰をかけ、少し休憩。「逆さ羅臼岳」の絶景を眺めながらのひと休みは贅沢すぎる体験となるでしょう。

湿原に囲まれた羅臼湖は、雲の上の別世界

三の沼以降は日差しが降り注ぐ開けた湿地帯が続き、道も整備され歩きやすくなります。登山ですので、もちろん急斜面もありますが、長く続く登りはありません。静寂な自然のなかを進みます。

桜井:羅臼湖のガイドたちは、春になると「つぼみの花びらが開く音が聞こえた」と言うのですが、それほど一帯は静寂に包まれています。聞こえるのは梢を揺らす風の音だけです。

 

四の沼、五の沼を眺めつつ歩を進めていった先には、これまでの沼よりも遥かに雄大な羅臼湖が待っています。標高731mながら雲が近くを通り、そんな青空や雲を湖面に映し出す羅臼湖の景色は、まるで雲の上の別世界のよう。この光景が紛れもなく、羅臼湖トレッキングツアーのハイライトです。

羅臼湖の手前には10人ほどが入れる展望デッキがあり、羅臼湖と奥にそびえ立つ知西別岳の景色を楽しむことができます。湖の周囲では、夏は高山植物のチングルマやワタスゲ、ミズバショウの花が咲き、秋は草紅葉が広がるなど、季節ごとに異なる表情を見せます。

到達のよろこびと、美しい景色を堪能しながら、桜井さんが用意してくれた温かいミルクティーをいただきます。疲れた身体にほどよく甘いミルクティーが染み渡り、なにものにも代えがたい充足感が体中に広がります。

変わりやすい天候、霧に包まれた羅臼湖トレッキングもまた楽しい

また登山道だけでなく、この羅臼湖でも水浴びをするエゾシカやヒグマを見ることができるといいます。

桜井:ヒグマは6月頃から姿を現しはじめます。羅臼湖周辺に生息するヒグマは、ハイマツの実やミズバショウの球根、ヤマブドウなどの植物や、エゾシカなどの哺乳類などを食べます。

 

基本的にはヒグマが人に近づいてくることはありません。しかし、人が食べ物を持っていることを知ると、逃げずに近づいてきてしまうことがあります。食べ物を与えないことはもちろん、ゴミを捨てたり、食べ物を野外に放置したりしないようにしてください。

 

本ツアーでも、羅臼湖の展望デッキなどでお弁当を食べたいという要望をいただくのですが、ヒグマとうまく共生していくためにも、食事は飴やチョコレートなどの行動食のみとし、登山道や展望デッキでの食事は自粛をお願いしています。

 

またヒグマに出会わないためには、歩きながら声や音を出すなどして、ヒグマに人の存在を知らせることが大切です。麓の羅臼ビジターセンターでは、ヒグマ対策スプレーもレンタルしています。

 

もしそれでもヒグマに遭遇してしまったときは、ゆっくりと離れてください。走って逃げたり、大声でわめいたりしては、ヒグマを刺激してしまいます。臆病な動物ですから、害を与えなければこちらを攻撃してくることはありませんよ。

知床半島の山は午前中に霧が発生しやすく、昼から午後にかけて天候が回復することがよくあるそう。羅臼湖ツアーの行き(午前)と帰り(午後)を通じて、そんな知床半島特有の気候条件も楽しんでほしいと桜井さんは言います。

桜井:天候が変化しやすい地域なので、一日中晴れが続く日は珍しい。澄み渡った天気は気持ちいいですが、霧に包まれた登山道も幻想的で美しいですよ。

 

もちろん霧が続くこともありませんから、午前中に霧に包まれて三の沼で「逆さ羅臼岳」が望めなかったとしても諦めないでください。午後の帰り道、すっきりと澄み渡った空のもと、「逆さ羅臼岳」の絶景を眺めるかもしれませんよ。

 

登山道の入り口まで下山したらツアーは終了。参加者の多くが、「今度は季節を変えて『逆さ羅臼岳』の違った表情を見てみたい」「三の沼の湖面に映った羅臼岳に登ってみたい」と話すとのとこと。

人間が介入しない食物連鎖によって、独自の生態系と大自然が保たれてきた知床半島。羅臼湖トレッキングツアーは、そんな世界自然遺産の一部を体験しながら、絶景も楽しめる人気のコースになっています。一度参加してみれば、年に複数回、季節ごとに訪れたくなるリピーターの気持ちもよくわかるでしょう。

知床ファクトリー
住所:
北海道目梨郡羅臼町海岸町4-27
電話番号:
0153-89-2242
URL:
http://www7b.biglobe.ne.jp/shiretco/index.html
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