World Natural Heritage in Japan 日本の世界自然遺産

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Shiretoko 知床

海氷が育む生態系と多様な生物の宝庫

北海道の最北東端に海へ突き出すように延びる知床半島。長さ約70km、幅が広いところで25kmの細長い半島の中心部は、羅臼岳や硫黄山など活動中の火山を含む知床連山が南北に連なります。また、世界でもっとも低緯度に位置する海氷が流れ着くポイントとしても知られています。海氷によって大量に発生するプランクトンを食物連鎖の基点として、海と陸の生き物が相互にかかわり合い、豊かな生態系を築いているのが特徴です。知床の名前の由来はアイヌ語で地の果てを意味する「シリエトク」がなまったものであるように、人類による開拓や開発の手が届かない原生の姿を留めるこの半島では、海と山、そしてその間の海岸で、動植物による命の営みに触れることができます。

Through a Day 1日をめぐる

東側を根室海峡に面し、西側はオホーツク海に面した知床半島は、同じ日であっても東と西、そして海岸と山あいではまったく異なる風景が広がります。とある夏の日の多様に輝く知床半島の姿をご紹介。

クジラの見える丘公園 朝日
04:00

Sunrise at Whale Observation Hill Park クジラの見える丘公園 朝日

羅臼中心部から東に少し外れた岩壁に立つ羅臼灯台。そこに隣接する高台の公園は標高80mに位置し、根室海峡を180度見渡すことができ、その名の通り潮を吹くクジラの姿も見ることができます。夜明け前に足を運んで、海から昇る朝日を待つことに。暗いうちから出港し沖で漁を行う漁船の光を眺めていると、少しずつ海と空が白んでき、1日の始まりを知らせる太陽がゆっくりと水平線から昇ってきました。

ヒグマウォッチングツアー
05:00

Brown Bear Watching Cruise ヒグマウォッチングツアー

羅臼から漁船に乗り込んで知床岬を目指しつつ、海岸に現れる野生のヒグマを船上から探すツアーへ。出発場所は、羅臼側の海岸沿いに北上する羅臼線のどん詰まりにある相泊(あいどまり)漁港。車で行ける日本の最北東端です。羅臼の海をよく知る熟練の漁師さんが、長年培ってきた勘を生かして次々と海岸にヒグマの姿を見つけてくれました。早朝のツアーに参加すれば、朝日によって陰影が深く刻まれた美しい海岸の風景も楽しめます。

知床五湖
08:00

Shiretoko Goko Lakes 知床五湖

斜里側の湿地帯、原生林のなかに点在する5つの湖の朝は静謐な空気が漂っています。ヒグマが頻繁に出没する地域であることから、安全に誰でも景色を楽しむことができる高架木道と、事前にレクチャーを受けたうえで入ることのできる遊歩道と、2つの楽しみ方が設けられています。野生動物の気配を緊張感をもって感じつつ、海から吹く風を浴びながら散策すれば、朝の気持ちのよい散歩になります。

カムイワッカ湯の滝
10:00

Kamuy-wakka Hot Falls カムイワッカ湯の滝

少し肌寒い午前中、アイヌ語で「神・魔の水」という意味の滝へ。硫黄が滲み出ているために魚や植物の気配がなく、黄色や緑に染まった岩をつたってほのかに温かい温泉が優しく流れています。膝くらいまで浸かって温まりながら第4の滝まで上がれば、今にも崩れ落ちそうな岩山と湯気を上げる滝の姿が間近に迫り、大地への畏怖を感じられます。

羅臼岳の山頂
11:00

The Summit of Mt. Rausu 羅臼岳の山頂

知床半島のほぼ中央に聳える活火山・羅臼岳。標高1660mながら緯度が高いため、本州では2000m級以上の山でしか見られない高山植物に溢れています。早朝に登山口を出発すれば、昼前には山頂へ。知床半島の全容と東西の海、そして遠くに国後島などの姿を望む360度のパノラマは、息を呑むほどの美しさ。途中の羅臼平からは裾野が綺麗に広がる羅臼岳の山容を眺められ「知床富士」という別称にも納得です。

しれとこ森づくりの道散策コース
12:00

Shiretoko Forest Keeper Trail Walking Course しれとこ森づくりの道散策コース

かつて3度にわたって開拓が行われていた土地に設けられた、知床自然センター周辺にある複数のトレッキングコース。開拓の歴史にも触れたいと歩いたのは往復5kmの開拓小屋コース。原野の森と植林された森が入り交じるなか土を踏みしめて歩を進めると、一部復元された当時の開拓小屋が現れます。森を抜けるとかつて放牧地だった草原に。知床連山を見渡しながら命をかけて開拓を試みた先人に思いを馳せてしまいます。

ホエールウォッチングクルーズ
13:00

Whale Watching Cruise ホエールウォッチングクルーズ

根室海峡には季節によって複数種類のクジラが現れます。羅臼沖の海は水深が深く、陸からそんなに離れないところでも水深2000mに達するため、彼らにとって良好な餌場であるからです。9月に姿を見せるのはクジラのなかでも最も深く潜ることで知られるマッコウクジラ。およそ1時間もの潜水の後、息継ぎのために浮上するクジラは呼吸に合わせて盛大に潮吹きを行います。約7分の浮上を終えると尾びれを高く上げて再び深海へと潜水。一部始終を間近で見届けることができます。

シーカヤック
14:00

Sea Kayaking シーカヤック

知床はシーカヤッカーにとって聖地ともいえる憧れの地。自分でパドルを握りしめオホーツク海に漕ぎ出したいと、ウトロの東の海岸から東へとカヤックを進めました。大型のクルーズ船では近づけない海岸の断崖絶壁を真下から見上げたり、岩壁から滴る地下水の滴を顔に感じたり、自分でコントロールをする乗り物だからこそ出合える景色があります。

フレペの滝
15:00

Furepe-no-Taki Falls フレペの滝

カヤックで目指したのは崖から海へ落ちるフレペの滝。山に降った雨や雪解け水が断崖に染み出している、川のない珍しい滝です。水量が少なく細やかにこぼれる様子から「乙女の涙」の愛称も。水が通る部分は絶壁にもかかわらず青々とした苔や植物が生え、生命の息吹を感じます。陸から見ることもでき、その場合は知床自然センターから遊歩道を約1km歩きます。

知床峠展望台
16:00

Shiretoko Pass 知床峠展望台

気持ちよく晴れた日は太陽が傾きかけた頃に知床峠展望台へ。標高738mに位置し、知床横断道路の最長部にあたります。霧がかかることが多い峠ですが、運よく霧が晴れれば羅臼側の眼下に雲海が広がり、また西からの柔らかい日差しに照らされて羅臼岳、そして山を囲むように広がるハイマツとススキが橙色に優しく輝きます。少しずつ暗くなっていく羅臼側には、雲の向こうに国後島が見えることも。

プユニ岬
17:00

Cape Puyuni プユニ岬

ウトロの町を見下ろせる高台、オホーツク海に突き出すように位置するプユニ岬は、知床でも有数の夕日の名所。国道沿いの見晴橋で車を止めて眺めることができます。ウトロの町を照らしながら、オホーツク海の向こうへ姿を消していくまん丸の夕日を眺めれば、数々のアクティビティでくたびれた1日の疲れが癒やされるようです。

写真 = 谷口京

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